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【オリジナル】腕時計と僕【短編SS】

完全オリジナルです。
パチパチ書いてました。

続きからどうぞ。



1
時村 刻は名前を知られない村に住んでいた。
時村、なんて苗字も知られていない、多分苗字名鑑を何度見てもそんな苗字存在しないだろう。
もはや、村というより独立国家と言って良い程ドドドド田舎。別に、ドドドドだからと言って怖いわけでもない。
それでも、こんな村が少しだけ有名になったのは数年前に作られたあの時計塔のせいだ。
こんな田舎に時計塔を作ろうと言った村長。何か理由はあるのかと聞いた所、自分の家の時計が壊れたからとか言いやがった。
村の皆は猛反対。その金を出すのは誰だとか、別に腕時計で十分だろうだとか。

そんな猛反対の声を無視し、作り上げた時計塔。
実を言うとあの時計は割と気に入っている。
どこがデザインがヨーロッパを真似てみたデザインだし。
あの時計塔をデザインしたのは誰なんだろうと思って、母親に聞いてみたら。
「新井時計さんあるでしょ?あそこのご主人がデザインしたんですって。あの人実は帰国子女らしいのよ」
と言った。
新井時計。小さいころ自分の部屋の時計を買いに行った覚えがある。
昔からある時計屋で、掛け時計、置き時計、目覚まし時計、腕時計、果てには絶滅寸前のハト時計まで置いてあるのだ。
時計の事なら新井時計、と言われるくらい村には名が知られている。
……そういえば、子供の頃に行った時に既にお爺さんって歳だったが、今はどうしているのだろうか。
あの時計塔が出来たのは約5年前だったか。少なくとも、6年前にはお爺さんは生きている事になる(作る前にデザインをするから)。
そうなると、少しだけ気になってくる。あの時計塔。
いつも何気なく見ている時計塔だが……。

2

次の日。
「え?壊れた?」
「そうなのよ、結構不便よね」
 母親が手を頬に当てて言った。
思っていた矢先に壊れた。そう言われればもう5年。
メンテナンスはろくにしていなかった、との噂。
 その噂を聞いた時に僕はというとちょっと悲しかった。
つまり、あのお爺さんはもうこの世に居ないということだからだ。
この村であの時計塔をメンテナンス出来るのはあのお爺さんだけ。
息子が今は店を引き継いでいるらしいが、まだ勉強中で時計塔を直す技術まで持ち合わせていないらしい。
 なんだか、無性に気になって来る。
学校へ行く時に絶対に見る時計塔だからなのだろうか。動いていない、となると変に日常が乱される。
そこの時計塔が動いていない、というだけで。
……なんだ、僕は時計塔がやっぱり好きなんじゃないか。
と、変な笑をこぼしてしまった。母親に見られないように。


 学校。
家から学校までは、数メートルある。
この村に高校を選ぶとかそういうのは無い。やっぱり独立国家なので、小学校も中学校も高校もエレベーター式なのだ。
そうして、大体この村に住む人達は大学へ行かない。
大体、なのでたまに行く人も居る。そういう人は大体上京して、この村に帰ってくる事は無い。
掟とか、そういうのがあるわけじゃないんだけど、帰ってこない。
 ……ただの偶然だとは思うが。
小学校と中学校と高校は並んでいる。学校区とか言われている。
だから、あの時計塔が出来たのは中学の2年だったので、この5年間はずっとあの時計塔を眺めていた。

「やっぱり動いてないんだな」
 横目で見る。時刻は0時38分。
そんな深夜に学校なんてこないし、いやもしかしたら昼間に止まったのかもしれないけど。
 でも、まぁそのうち動くだろう。
あの村長が作ると言ったんだ、気に入っていない訳がない。
だから、すぐにでも時計屋を派遣してさっさと直させるだろう。
……そのお金はどこから出るのかは知らないけど。


「時計塔止まってるねー」
 学校について、自分の席に座っていると話しかけてきた。
宮木 静奈。幼なじみ……いや、このクラスに居る全員が幼なじみなんだけども。
エスカレーター式だから、見る顔は絶対に変わらないから。
 その静奈も時計塔の話題に触れるという事はやっぱり村に居る人は気になっているのだろう。
「だな、なんだか変な感じだよ」
「やっぱり?さりげなく見てたからさー、なんか寂しいや」
 僕も同じだった。
「直るのかな」
「わかんない、あの村長さんなら直すでしょ」
「まぁな」
 静奈は笑っていた。
村の人間……少なくとも、結構な年数見てきた僕達にとっては
 やっぱり、大切な時計塔なのだと改めて実感をした。

3

 放課後。
僕は新井時計に来てみた。
やっぱり、小さいころに来た時と変わらない。
古びた時計は今も健在だし、ハト時計もある。息子さんが店主をやるようになったからか、新しい時計も増えてる。
デジタル時計とか。
 そう言われれば、僕が小さかった頃は「デジタル時計」がなかったような気がする。
もしかしたら、あのお爺さんがそういった「デジタル」を極端に嫌っていたのかもしれない。
聞くのは失礼だから、永遠に謎のままで良いんだけども。
「あ、いらっしゃい。もしかして刻くんかな?」
「え、あ。はい。刻ですけど……」
 息子さんが覚えていたのは驚いた。
確か僕が来たのは、もう数年前のような……そうだ、小学校の二年生だった。
母親から「もう起こさないから自分で起きなさい」と言われ、僕はというと
「じゃあ目覚まし時計買って」と言って、僕はここの時計屋に来たんだ。
今でもその目覚まし時計は健在で、毎朝やかましい音を立てながら僕を起こしてくれる。
 ……だんだん思い出してきたぞ。
だとすれば、僕はこの息子さんと会っていない。
あの時会ったのは、お爺さんだけだ。
「あの、僕最後に来たのって小学校の頃なんですけど」
「ああ!すまないね、父親から君の事は聞いていたから」
「僕の事ですか?」
「そうさ、君の名前は『時を刻む』のだろう?」
 時村 刻。時と刻むがあるが……。
たったそれだけの事で覚えておいてくれたのだろうか。
「あの時の父親は初めて見たってくらい嬉しそうでね、来るお客さん来るお客さんに君の話しをしていたんだよ。私もよく聞いてね」
 だとすれば、僕の名前は村じゅうに知れ渡る事になっている。
……いや、こんな小さい村だから、どこかで聞いたことある名前っていうのはよくあるんだけども。
 だが、時計屋はそんなに頻繁に来るものじゃない。
時計が壊れるのだって滅多に無いし、時計を買う事も滅多にない。
僕だって小学校から目覚ましを使っているくらいなのだから。
 それにこの村にはブランドとかには興味が無い人間が多い。
聞いた話し、なのだが都会とかでは時計の値段でその人の年収がわかるとか。
あくまで聞いた話しだが。
「そうなんですか」
 僕は答えた。
「あはは、刻くんは覚えてないかな?ちょっと待っててね」
 そう言うと新井さん(多分新井時計だから、新井さんだろう)は裏方へ行って何かを取ってきた。
小さな箱。少しほこりがかぶっていて、開けた形跡が無い。
新井さんが開けると、そこには数枚の写真があった。
「あ、これ僕ですよ」
 僕の写真だった。
「面影があったから、一発でわかったよ。この写真は父親が大事にしていたものだからね」
「……」
 そこまで気に入られていたなら、もっと来ればよかったなと後悔していた。
僕は時計塔が好きなように、時計が好きなのだ。
名前にも「時」と「刻」が入るくらいだし。
ちなみに「刻」は「きざ」じゃなくて「こく」って読む。
小さいころはよく「こっくん」って言われていた。
と言うか、今も呼ばれている。
静奈くらいだが。
「なんか申し訳ないですね」
「何がだい?」
「その……あんまりこれなかったものですから」
「ああ、そのことかい。……実はね、刻くんには渡したい物があるんだよ」
「渡したいもの?」
 僕が答えると、新井さんはまた裏方へ行った。
一気に持ってくれば良いのに、と思った。
 思ったけど、理由がすぐに分かった。
どうやら見つからないらしい。
「すまないね、ちょっと待っていてね。すぐ見つかるから」
「はい」
 のんびり待つ。
店内にある時計を見渡していた。
新しい物、古い物、ハト時計。
 小さいころに来た時ハト時計がすごく印象的だったので、いつも見てしまう。
と、見惚れているとハトが顔を出した。
時間は16時。4回鳴った、上手く出来ているものだ。
「ん?」
 ハト時計の隣に置かれている時計が気になった。
腕時計。えらく古い物のような気がする。
 なんだか、不思議な感じがする。
「あー!」
 新井さんが叫んだ。
思わず背中がビクッと上がってしまった。
見ている時計が時計だったからだが。
「あったあった!これだよ、あちゃー……間違えてお店出してたんだね。お客さんに売る前でよかったよ」
「え?これなんですか?」
 不思議な感じのする腕時計。
……なんとなく、だけどつけてくれ!って言ってるような気がする。
無機物が喋るわけも無いのだが。
「父親がね、これを是非君にって」
「え?」
 ちょっと驚いた。
どこかで欲しいと思っていた僕はちょっとだけ嬉しかった。
新井さんが取って、僕に手渡しをする。
 触ってみると、やはり不思議な感触。
触った事のある……?ような感触。
「え?」
 なんでこんな事思ったのだろうか?
そもそも僕は腕時計なんて触ったことすらない。
僕の父親は腕時計をつけるほど時間を気にする人ではなかったし、親族にしても腕時計をつけている人は居なかった。
なのに触った事のあるような感触。
 ただの勘違いだと思うけど。
「え?どうしたんだい?」
「あ、ああ!いや、なんでもないですよ」
 念願の(実は欲しかった)腕時計を手に入れた。
僕は新井さんにお礼を言って、お爺さんの仏壇に手を合わせ
……お爺さんにもお礼を言ってから、新井時計を後にした。
 家に行くまで僕は時計を何度も見ていた。
左腕につけた時計、僕は右利きなので左腕につけたのだ。
やはり、どこか浮かれていた所があったのだと思う。

4

 翌日。
「こっくん、それ買ったの?」
 学校に着くと、静奈が話しかけてきた。
左腕に光る、時計。
「もらったんだよ」
「へぇ~、誰に?」
「新井さん」
「新井さん?えーと、新井時計の?」
「そうそう」
 これも同じ。
「どこかで聞いた事ある」ので、静奈もパッと名前が出てくる。
小さい村ならではだ。
「いいなぁ、私も時計欲しいからさー」
「あれ?懐中時計みたいなの持ってなかった?」
「あったんだけどねぇ、最近あきにくくてさ、不便なんだよね」
 静奈はいつも懐中時計を持ち歩いていた。
懐中時計は、祖母からもらった物らしくいつも大切に持ち歩いている。
だが、その懐中時計が調子悪いとの事だ。
 新井さんに見てもらえばいいのに。
「あ、そっか。時計屋さんだもんねぇ」
 静奈は時計屋ってなんだか分かっていないみたいだった。
 家でも学校でも、果てには街の人にまで時計の事を指摘された。
……やっぱり僕って村では知られてる人物なんだな、とやっぱり認識させられた。
新井さんのせいだが……。

5

 腕時計により、時計塔の存在が薄くなってきた数週間後。
僕は学校へ行く途中だった。
小学校、中学校、高校といつも一人で登校しているので、誰かと一緒という訳ではない。
だからと言って友達が居ないわけではない。なんとなく登校中は一人が良いのだ。
中二病とでもなんとでも言うが良い。こんな小さな村、叩く人間は未来の僕くらいだからな。

パキッ

という音がした。
主に、左腕あたりから。
 僕は時計を恐る恐る見た。
特に様子は変わっていないように感じた。
……この時計には『秒針が無い』のだ。
だから、時計が止まっているのか動いているのかを分からない。
 凄く心配だった。
ここ数週間、凄く気に入っていたから。
それに、あのお爺さんの形見でもある。あのお爺さんには一回しか会った事なかったけど……。
街ですれ違う程度には会ったかもしれないけど、それは会ったとは言わない。

6

挙句の果てに、その時計は壊れていた。
しばらく時間を待ってみて、体内時計で60秒を測ってみたが、分針が動く事はなかった。
学校もどうでもよくなるくらい、悲しい。
「くそ……」
 純粋に悔しかった。
涙が出そうなくらい。


 悔しがっていた。

 悔しがっていたら……時計が光った。
数字の部分が光る、眩しい。この時計にライト機能なんてついていたなんて聞いていない!
これはなんだ、お爺さんのお茶目機能か。壊した僕に対する罰か!
だとしたら、お爺さんは凄いいたずら心を持ってる!
 そうじゃなくて、尋常じゃ無い光だからお爺さんのせいじゃないんだろう。
頭が混乱していた、慌てていて腕時計を外せなかった。
 だんだん、光が弱まっていった。
何かがそこに居た。
顔立ちが整っていて、髪の毛は黒髪で長くて、『まるでこの時計のデザインみたいな』服を着ている、

女の子が目の前に居た。


「……」
「……!?刻様!?刻様なのですね?」
 コクサマ、コクサマナノデスネ。
刻とは誰のことだろう、見回してみても僕以外の誰も居ないみたいだ。
刻とは僕の事だろう、僕の名前は時村 刻だから。
「えぇー!?」
「刻様……申し訳ございません、このような醜態を見せるのはなんとも失礼な事と存じ上げています」
 いやいや、そこまで仕立て上げられるような人間じゃないからね!?
むしろ、タダで時計をもらって喜んじゃうような人間だからね!
「しかし、このような姿にならなければ刻様とお話しすることが出来ませんので、申し訳ございません」
 二回も謝られた。
壊したのは僕なのに……。
「いや!刻様は何もしておりません!ただの、寿命でございます!わたくしは『ハカ子』と申します。わたくしの姉である『ヒジ子』は現在寿命を迎えております!」
ハカ子。
 何故ハカ子なんだろう、と考えてみた。ハッカーの子供?IT革命!?この村にもついにIT革命が!
ヒジ子って……肘の子供みたいだな!
などと、ツッコミどころが満載な台詞であるが為に、僕の頭はさらに混乱する一方だった。
「刻様、折り入ってお願いがございます、わたくしハカ子と姉であるヒジ子を延命させるには秒針である『ショウ子』が必要なのでございます……」
 今度はショウ子か。こっちは名前っぽい名前だった。
ハカ子、ヒジ子、ショウ子。
全員に「子」がついているのは、どこか古い感じを出させていた
年齢は僕と変わらないように見えるけど。
 何がなんだかさっぱりだ。まるで漫画みたいな展開に。
「えっと、質問は山のようにあるんだけども……」
「はい!刻様のご質問ならば、わたくしはいくらでも答えます。お答えできる範囲ならば、いくらでも」
 えらく丁寧口調で、僕に言った。
それもなんだか楽しそうに。
「君は誰?」
「はい!わたくしは、刻様が左腕に付けられている腕時計の分針でございます」
「……」
 僕は時計を見てみた。
分針だけが消えていた、さっき確かめたら動かなかった分針だけが。
「? おかしくない?君が分針なら、動いていないのは君じゃないの?」
「はい、わたくしめもその辺りは不可思議に思っているのでございます、姉は何かを知っているみたいなのですが」
 答えられる範囲で、と言ったので答えられる範囲だけだった。
知らないことを教えろと言っても無理な話しだ。
ハカ子は、先ほどから腕を合わせて僕にお願いするような形をとっていた。
まるで僕を神様みたいに扱っているような。
 僕が過信しすぎなのかもしれないが。
「ふーん、わかった君の目的は秒針を探す事なんだね?」
「はい!その通りでございます、故にわたくしは刻様にお願いする為にこのような醜態を晒しているのでございます」
「醜態って……」
「はい……わたくし達針は、ただ動いているだけの存在。だからこそ、わたくしは今仕事をしていないのでございます!仕事のしない針には存在意義があるのでございましょうか!?」
 熱く語られた。
針にもいろんな事情があるらしい、それにしても仕事熱心な針だ。
さっきから、逆ハの字の眉で語りかけられた。
怠け者の父親も、これだけ仕事熱心だと良いんだが。
ちなみに、僕の父親は農家をやっている。この村のほとんどが農家だ。
自給自足をする為である。
「えーと、じゃあ秒針を探せばこの時計は直るの?」
「その通りでございます!何卒、よろしくお願いいたします」
 そう言いながら、膝を地面につけ土下座をしてきた。
やめてくれ、こんな所村の誰かに見られたら、逆に僕が何かしているみたいじゃないか!
ただでさえ、僕はこの村では名が知られちゃっているのに、また妙な噂がたったら嫌だから!
「わ、わかったから!顔を上げてよ!探すから、ね!?」
「本当でございますか!?いいえ、刻様が嘘を言うはずがございません!ありがとうございます!ありがとうございます!この御恩は一生忘れません!」
 まだ恩を覚えるほど何かした覚えはないけども。
一生……か、よく考えれば針に生きるも死ぬもあるのだろうか。
あ、でも死んだからこそ針が止まったんだっけ。
だとしたら、案外あっさり死んでしまうのかもしれない。
 でも、ここまで仕事熱心なら変に同情をしてしまう。
はたして、針達には娯楽などはあるのだろうか。
「娯楽でございますか?わたくしを見ている刻様と目が合う時が一番の快楽でございます!」
 恥ずかしいから!なんだか、その容姿で言われると滅茶苦茶恥ずかしいから!
それを考えると、やっぱり売れ残っている時計って寂しいんだな。
 娯楽が無いっていうか。
「目覚まし機能のついた時計の針は、タイマーの針と重なる瞬間が最高の快楽らしいのでございます」
「なんか、針の世界の快楽ってさっぱりなんだけど……」
 つまり、それは僕を起こすあの目覚ましは僕を起こした瞬間というのが、最高の快楽って事だろ。
なんだか、悪趣味だな。
「ああ、でもわたくしにはそのような快楽は意味がわかりませんのでございます」
「なんで?」
「わたくしは、分針だからでございます」
 ああ、そうか。分針はタイマーの針と重なっても意味が無いからな。
だとしたら、姉である時針が快楽を得るってことだよな。
……なんか嫌だな。
とは言っても、腕時計だし。タイマー機能があるわけじゃないから、良いんだけども。
「わたくしのお父様は秒針をつける事はありませんでした。そのためわたくしが秒針の役割をしなければいけなかったのでございます」
「え?どういう事?」
「今回死にそうなのは、わたくしなのでございます。そのためわたくしは動く事が出来ませんでした、しかし……姉が何かをした為に、わたくしは今こうして刻様とお話しているのでございます」
「……それで?」
「はい、秒針の合図でわたくしは動くのですが、お父様はわたくしに秒を測るのを任命したのでございます」
 つまり、容量オーバーって事ね。
秒針がついていない時計っていうのは寿命が短いって事か。
物によるのかもしれないけど。
お父様というのは、あのお爺さんだろうか。
だとしたら、これを作ったのはやはりあのお爺さんなんだろうな。
時計塔のデザインするくらいだし。あのお爺さんは結構な腕前だったのかもしれない。

7

話しを大体聞き終えてから、僕は急いで新井時計に行った。
新井さんはまだまだ半人前と言うが、僕は完全に素人なのでさっぱりなのだ。
そもそもこのタイプに秒針をつけられるかすら怪しい。
時針の姉は何かを知っているみたいだけど、人間の姿になれるのはハカ子だけらしい。
新井時計に行くと、新井さんは驚いた顔をしていた。
「こ、刻くん!?あれ、学校は?」
「あ、その……」
「可愛い女の子を連れて……ってそんな子居たっけ?この村に」
「あ、あのう……こ、刻様!」
 僕に助けを求めているらしい。
君のお父さんがあのお爺さんならば、この息子さんは兄弟みたいなものなのに。
何も感じないらしい、作業場とかじゃないと気づかない物なのかな。
この前まで店頭に置かれていたのに。
「あーえっと……最近来たばっかの子みたいで、学校に転校してきたんですけど先生が村案内しろって言ってきて」
「ほぉー、それで刻くんが」
「そうなんですよ」
「……」
 僕の裾を掴むハカ子。
なんか可愛い。相手は針なのに!
「こんな可愛い子がねぇ」
「この子も、時計が好きなんですよ。だからここを紹介してあげようって思って」
「へぇ~……少し見ていくかい?」
「あ、えっとお願いがあるんですけど、この時計に秒針ってつきますか?」
 僕は左腕から腕時計を取って、新井さんに渡した。
「あれ?分針がついてないみたいだけど」
「あ!えーと、秒針がつかないかなって……ちょこっと自分で調べたと言うかー あはは……」
「というか、壊れちゃってるね。見ようか?」
「だ、大丈夫です!えっと、それでつきますか?」
「ふむ……どうやら父親は最初に秒針をつけようとしたみたいだね、付ける場所はあるんだが……」
 新井さんは少し難しそうな顔で時計を見ていた。
僕は内心ドキドキである。
「入る針が無いね、こんな小さい穴に入る針なんてむしろあるのかい?と思うくらいにね。この針だと見えないくらいじゃないかな……むしろ、見えなくしているような気もする」
 つまり、見えなくして分と時だけを動かそうとしたって事か。
だけど、それには材料が足りなかったからつけなかった、と新井さんは説明をしてくれた。
ハカ子はと言うと……時計と話してた。
 どうやら、他の時計と話しが出来るらしい。
時計と、というか針とだが。
「ハカ子ー?」
「……ふふ、大丈夫だよ。お姉ちゃんを絶対助けるからさ、みんなも頑張ってね。私はみんなともうお話は出来ないけど……」
 どうやらお別れを言っているらしい。
普段のハカ子を見れたような気がする。僕以外には、あんな喋り方をするんだな。
……ああ言う喋り方をしてくれたほうが気が楽なんだけどな。
ハカ子の喋り方は従者っぽい、漫画で見た事あるような執事とかメイドとか。
今までそういった人と話した事は無かったし、慣れない物は慣れない。
ハカ子には普通なんだろうけども。
 むしろ、そうじゃないとハカ子はハカ子でやりにくいのかもしれない。
ハカ子にもう一度呼びかけ、店を後にした。
今回は秒針がこの時計に入るという情報だけで十分だ、来る甲斐はあっただろう。
それ所か、普通の針ではダメという情報まで入った。
これは大きな一歩じゃないのかな。
「それにしても、普段見ない高さから見る風景と言うのは格別ですね、刻様」
「僕はいつもこの風景だよ。あ、そっか僕の腕の位置から風景を見てるんだもんね」
「はい、そうでございます。しかしながら、最近の若者と来たら淫らな格好をされておるのですね」
「淫らな?」
 淫ら。つまり、卑猥な格好。
だらしないとか、そういう格好。
「あんな格好をしていたら、そ、その……下の履物がみえてしまうのですよ」
「下の履物って……」
 靴か。靴下か。
「違います、そ、その……外来語を使わせてもらいますとパンツと申すでしょうか」
「……」
 なるほど、スカートの事を言っていたのか。
確かに、きわどいミニスカートにしてるのは最近増えたな。
駅前とか行くと見るし、学校でもスカートを折ってあげてきわどくしている女の子も居る。
 そうか、僕が腕をおろすとちょうど位置的にパンツが丸見えなんだな。
なんと羨ましい、僕は時計になりたい。
「刻様は、どう思われますか?」
「どうって言われてもなぁ、最近の流行だからなんとも言えないよ」
「ぐぬぬ……申し訳ございません、こんな話しをしてしまい」
「良いよ、そういう話しのほうが楽しいし」
 出来れば、知りたい女の子のパンツの色を教えてくれてもいいくらいだ。
とは言っても、今は見えないのか。
……というかハカ子はパンツとか履いてるのか?
「こ、刻様と言えどえ、えっちな事を考えていれば成敗でございます!」
「ごめんごめん、欲求不満の男子高校生なんてこんなもんだよ」
 村が村なので、そういった事には疎くなりやすいのだが、僕はと言えば極秘ルートがあるので、
ここで言うにはもったいないのであえて伏せておこう。最近は便利な世の中になったから。
それはともかく、ハカ子にしてもそういった事を考えるというのは女の子なんだなと実感をする。
変な痴女だったら、それはそれで困るが……。
「はぁ……いったいショウ子は何処へ……」
「まぁまぁ、焦るような事じゃ」
「でも、刻一刻と姉さまの寿命は……」
「うーん、それがよく分からないよなぁ。なんで君の寿命が来たのに、君のほうが出てきたんだろう」
「……実はそこらへんは分からないのでございます。記憶が無い、と言えば記憶が無いのです」
「記憶が無い?」
 記憶障害。
そもそも針のどこに記憶を貯める場所があるのかは不明だが。
無機物なのに。

8

 しかし、日本には八百万の神が居るっていう言い伝えが今も続いている。
使い古した物には神様が宿るのだ。
大体、10年くらい使うと神様が宿るって言われている、祖母から聞いた話しだ。
この村はそういった宗教的要素を結構信じている。
そのかわりクリスマスもバレンタインも無し、日本の宗教だけ。
別に強制されている訳じゃないけど、昔からの名残でそうなっているだけだ。
「手当り次第探すしかないな、そもそも村にあるのかも分からないけど」
「いえ、多分この村にあると思いますでございます。お父様は、そのような事を言っていた覚えがあります、秒針はあとでつける、と」
「それで付け忘れたんだ」
「はい、お父様はそれを刻様に渡そうと言っていました。お父様はその頃既に目が悪かったのでございます。故に、秒針を入れたか入れなかったかが見えなかったのでございますよ」
 なるほど。完全に入れ忘れだったのか。
秒針に任命は姉からだと言う。それもそうだ、秒針を測らないと分も時も動かない。
お爺さんも歳だったんだろう。
 だからと言ってお爺さんを責める筋合いは無い。僕はもらう側の人間だったのだから。
「次はどこを探してみようか」
「そうですね……」
 顎に手を当て考えるハカ子。
僕にもハカ子にも検討がつかないから、考えてもしょうがないんだけども。
 だが、忘れたということはどこかに置いてきたということ。
その置いてきた所を手当たりしだい探すのだが、目にも見えないような秒針。
仮にそこの場所を特定したとしても、そこの場所からさらに探すのが難しいだろう。
落としたコンタクトレンズを探す程度には。
僕コンタクトレンズでもメガネでも無いけど。
「出来れば、お父様の工房が良いのですが」
「でも、それは新井さんが許さないと思うなぁ。というか、あったら僕に渡してるよ。きっちり取り付けてね」
 新井さんも僕に渡す気満々だったのだから。
時計を作る物としては、最高の状態で渡したいだろうから、見つけ次第僕に言って時計につけて僕に返してくれると思う。
この村はそういうマメな人が多いんだよな。
「そうでございますか……」
 落ち込むハカ子、手をぶらぶらさせている。
一秒でも早く姉を助けたいのだろう。
僕としても、一秒でも早くこの時計が動いているのを見たい。
「まぁ明日からは学校行くからさ、今日いっぱいは探すのに付き合うよ」
「あ、ありがとうございます!」
 落ち込んでいたハカ子が顔を上げて喜んでいた。
結構扱いやすい奴なのかもしれない。

9

 その日僕はあらゆる所に言った。
神社、お寺、公民館、村のふれあい所に、いろんな家。
学校にだけは行けなかったが、村を回りきった感じもした。
この村で産まれて数年立つが、ここまで回ったのは初めてといった感じ。
 最後に村長の家に行った。
行動とか、どんな人だったとか。
村長は笑いながら話してくれた、思い出を語るのが好きな人なのだ。
お爺さんと村長は同い年だったらしい。
昔から仲が良かったらしく、いろいろ教えてくれた。
「あいつは先に行きすぎなのじゃ。勉強も恋愛も仕事も、そして……あっちへ行くのもな」
 その時だけ村長は悲しそうな顔をしていた。
「ワシはこの村に生まれこの村で育ち、今があるのじゃ。誰よりも村を愛し、誰よりも村人みんなが幸せになるように努力をしてきた」
「はぁ」
 曖昧な返事をした。
自分語りが始まるからだ。
「だがあいつは違った、ここでは勉強が出来ないと大学を出て、海外を回り、数十年姿を見せなかった」
 一息。村長はお茶を飲んだ。
「この村を捨てたかと思った、じゃが、あいつは帰ってきたんだよ。金と、女と、技術をもってな」
「……」
 それで先に行くというのならば、やはり全てにおいて先を越されたのだろう。
「わしは身分上この村を出るわけにはいかないのじゃ。あいつは金を村に寄付した、そしてこの村に住み始めた、女と一緒にな」
「いつ頃からなんですか?」
「そうじゃのう……ちょうどわしが村長に任命された頃かのう。そうしてあいつは時計屋を始めたのじゃ」
 なるほど、村長がどうしても時計塔を作らないといけない理由が分かった。
友人の頼みだったのだ。
それならば納得が行く、村人の反対を押しのけてあの時計塔を作った意味が。
「そうじゃ、あの時計塔はあいつの頼みじゃよ。わしは大賛成じゃ」
 村長は家から見える時計塔を見た。
物悲しそうに。
「あいつが死んで、時計塔も死んだ。そうして生き返らせる者はおらん。わしもそろそろかの、なぁ?時村の息子よ」
「僕を知ってたんですか?」
「もちろんじゃよ、あいつが真っ先に報告してきたのでな。知っているだろう?」
 なるほど、友人とあらば真っ先に報告するのは村長だ。
村長にいきわたるって事は相当の人間にいきわたったんだな。僕の名前。
なんだか複雑な感じだ、有名になるって。
こういう形で、だからかもしれないけど。
「わしが言えるのはここまでじゃ、ああ、そうだ時計塔の鍵を渡しておくよ。見に行ってやってくれないか、あいつはあそこに居そうなんでな」
 そういうと、村長は戸棚から鍵を出し僕に渡した。
鍵は日本の鍵ではなく、外国の鍵。よく漫画とかにあるような鍵だった。
だから、ピッキングされることが無いらしい。
そこまで重要なのかは知らないが。
「よくわからんが、あいつは時計塔に人を入れるのをものすごく嫌った。変なものが住まれても困るらしいからのう」
「僕は入っていいんですか?」
「ああ、君はあいつが気に入った人間だからのう。絶対に喜ぶ」
 ならば、僕はお爺さんに謝罪とお礼を言わないといけない。
次に行く場所は決まった、時計塔だ。
「して……刻よ、その娘は誰じゃ。村では見ない顔だが」
「え?」
 隠れていろと言ったハカ子がそこに居た。
「何出てきて!」
「も、申し訳ございません!わたくしの興味本位故の過ちでございます!しかしながら、わたくしはお父様のご友人であった村長様を一目見たかったのでございます!いかなる罰を受けるのを覚悟の上での狼藉でございます!」
 そういうと、ハカ子は正座し目をつぶった。
今から切腹でもするような勢いだ。
「待て待て、いいから……」
「刻?」
「ああ、えっと……僕の友達ですよ」
「わしは長年村に居るが……」
「外部の人です」
「ほう……わが村へようこそ。外部の人よ」
 そう言うと、ハカ子はゆっくり村長の前に行き膝をついた。
そうしてお辞儀をした、三つ指を立てて。
「ご迷惑をおかけしました」
「良く出来た娘じゃのう。親の顔を見てみたいものじゃ」
 あんたの友達だよ。
とはいえなかった。

10

 僕とハカ子は時計塔へと向かった。
村長の家からは近いのですぐについた、村長の意思で近くしたらしいのだが。
「刻様」
「うん?」
「この時計塔はお父様の最後にして最高の作品なのでございます」
「ふーん……」
「デザインはさることながら、内部の仕組みはわたくしたち針からすると一目瞭然。あのお父様の息子様にはまだ理解するのには難しいとか」
「だから直らないんだよなぁ」
「お父様は海外にて、いろいろな事を学んだそうです。わたくしたち針を使い時計を作る際にはわたくしたちに話しかけるように、その時の事を語るのでございます」
「へぇ、話し好きだったんだ」
「さようでございます」
 そんな話しを時計塔の前でしていた。
近くまで行くと大きな時計塔。
中は見たこと無い、というか僕には見るのは不可能だし。
鍵はこれともう一個らしいのでなくさないでほしいとの事。この手の鍵は合鍵作るのも大変らしい。
 そりゃそうだ、海外で作られたんだから、合鍵も海外で作らないといけない。
僕はその手の専門家じゃないので分からないが、きっとそうなんだろう。
「それじゃ行こうか」
「はい」 
 時計塔の鍵を開ける。
ガチャリッという音がして、鍵は開いた。ドアノブに手をかけ、そっと開ける。
 中は暗かった、電気は無いか、と思いスイッチを探していた。
割と早く見つかった、パチッと音がし伝記が着く。
電気が着くと、時計塔の内部を見ることが出来た。
 壮大だった、僕は専門家じゃないから分からないが、ものすごい量の歯車。
どういった仕組みで動いているのかはさっぱり。
「刻様、実はこれ閏年や閏秒なども全て抑えているのですよ」
「マジかよ……」
 お爺さんすげー。天才だったのかな。
もしかしたら、海外では名の知れた時計技師だったのかもしれない。
だけど、有名になればなるほど隠居をしたくなるというもの、僕がそうだし。
とはいっても、お爺さんと僕では天と地の差くらいだけども。
 階段があったので、上ってみる。
簡易的に作られた階段だった、しっかりはしていない。作業をするためだけの階段だ。
いつ崩れてもおかしくないような気がするが、探さないといけないものがあるので階段を上る。
ここで死んだら誰も助けに来なさそう。数日後に村長が心配して来るくらいだな。
不吉な事を考えているとその通りになってしまうので、探すのに力を入れることにした。
「こ、刻様!」
 ハカ子は僕を呼んだ。
ハカ子は僕よりも先に階段を上っていたのだ。
「これは!?」
 驚いていた。
ハカ子の顔には光が帯びているように見えた。
気になったので、階段を駆け足で上がる。
 理由はすぐに分かった。
「ひ、人!?」
 人がそこに居た。
歯車と歯車の間。からといって、死んでいるわけではない。
歯車の歯の部分に手をかけ、足をつき、大の字になっている。
 女の子であった。
全裸だった、光って見えないけど。
「……もしかして」
「ショウ子!!」
「とうとう見つけたって思ったが人の形してるとは」
「いえ、これはわたくしと同じですわ。人間の姿をしているだけなのです、それより早く助け出さなければ!」
 助ける、といってもどうやって?
僕とハカ子しかこの場に居ないし。
だけど、ショウ子は結構遠い所に居るみたいだし。
どうすればいいんだろう。
「わたくしが飛びます!」
「そんな無茶な」
「可愛い妹のためです!」
 妹思いだなぁと、関心している場合でもなく。
「刻様……出来れば下で受け取ってほしいのです」
「僕が?」
「その、多分わたくしは軽いと思いますので」
 そういえば針だった。
ちょっと、手を腰に当てて持ってみた。
空気みたいに軽い。
そこに居ないような感覚。
「分かった、受け止めるよ」
「ありがとうございます!」
 僕は会談を駆け下り、下で待機した。
ちょうど直線状に僕は居る形になった。
歯車の間に居るショウ子の先に僕が居る形。
あとは飛び込んで抱きかかえ、それを僕がキャッチすればいいだけ。
「行きます!」
 その合図と共にハカ子は飛び出した。
無事に光るショウ子を受け止め、僕のところへ来た。
キャッチ。
ぼふっと音と共に、上手く受け入れる事が出来たみたい。

 その瞬間。

「!? なんだ!?」
「もしかして……時計塔が動き出すのではないでしょうか」
「な、なんで!?」
「ショウ子がこの時計塔をとめていたのかもしれません……」
「なんでもいい、ここは歯車が動き出したら危ない!」
「は、はい!」
 危ない、のはここが歯車が動くと歯車がやってくる直線状だからである。
ショウ子をかかえて出口へと向かった。
ハカ子同様にショウ子も軽いので楽々抜ける事が出来たのである。

11

 ドアを出ると共に、時計塔の鐘は鳴った。
何回も何回も、休んでいた時を戻すように。
次第に人が集まってきたので、僕たちは物陰に隠れる。
流石に全裸のショウ子をあそこで治癒するのは無理があるし、僕が逮捕されてしまう。
それは御免だ。
「刻様、ショウ子は平気なのでしょうか……」
「僕に言われても……多分平気だとは思うけど」
 僕は病気を治す医者でも時計を治す技師でもないので、さっぱりだ。
ただの高校生なのだから。
 ショウ子を床に寝かせ(下には僕の上着を引いた)、僕はこれからどうするか考えた。
病院へ連れて行くか、いや新井さんの所か。
そもそも本当にショウ子なのか。
そこらへんがさっぱりだった。
しかし、ハカ子はショウ子だと言った。
だから、ショウ子なのだろう。
 考えていると時計が光った。
あの時と同じ光、お爺さんのサプライズイベント。
「まさか……」
 残る針は、短針の時針のみ。つまり
「姉さん!?」
「ハカ子、久しぶりね」
「姉さーん!!」
 感動のご対面である。時間と分が重なり合う。
「何故、時針のヒジ子が?
「ああ、その件に関してなのですが、私は既に死んでいた身でした。しかし、ショウ子の放つ生命力により私は生き返ったのです、そうして今ショウ子はここに居る。その腕時計HHS-Aは完成するのです」
 ヒジ子、ハカ子、ショウ子、そして新井。
その後にヒジ子が説明してくれた。
……待てよ、ということは。
「お爺さんは最初から三人のことを知っていたのか?」
「はい、とはいっても私しか知らなかったのですけども。私は眠っていたので言う事が出来なくて申し訳ないです……」
 なるほど、そうしていつか来るだろう時計塔の止まりをカバーするのがショウ子の役目だったのか。
ショウ子は生命力を無意識のうちに放っているらしい。
その生命力とは、針にとっては大事なもの。僕たち人間には理解できないものだとか。
だから、時針の姉ヒジ子は出てくる事が出来たのだ。
ヒジ子は説明を続けた。
「刻様、本当にありがとうございます。私たちは幸せです。さぁ、ショウ子、起きなさい」
「むにゃ……ここどこ……」
 ヒジ子が一つ言うだけで、ショウ子はあっさり起きた。
「もちろんですよ、私とタイマーの針が重なると人って起きますから」
 なるほど!すごい納得した!!
「ショウ子!お疲れ様」
「うにゃ……ハカ子姉だ。おはよう」
「おはよ、気分はどう?」
「だるい」
「私たちよりもずーとお仕事してたもんね」
「大変だよー、お父さんが時計塔の秒を私に任せたときは私死ぬかと思ったもん」
「あはは」
 と、なんかいろいろあるらしい。
「待てよ、時計塔の秒針はショウ子だったのか?」
「はい、その通りでございます。しかし、それはもう解決したことなのですよ。刻様」
 どうやら、新しい秒針が産まれるまでの時間埋めだったらしい。
だから僕の時計は限界だったし、時計塔が止まったのは秒針の入れ替わり時期だったらしい。
そうして、その入れ替わりをハカ子がやった。
全てはお爺さんの策略。僕はまんまと動かされたのだ。
恨んでもないし、むしろ感謝しているくらいだけども。
「それでは、ハカ子、ショウ子?」
「はーい」
「……」
 ショウ子は返事をしたが、ハカ子は返事をしなかった。
ハカ子の目には涙が溢れていた。
「ハカ子?」
「わたくしは分針……しかし、このようにして刻様と話す事が出来ないとなると……」
「ハカ子……」
 ヒジ子はそっとハカ子を抱きしめた。
今日一日だけの事だったけども、ハカ子と話すのは面白かった。
こんなにも早い別れ。
なんだかむしゃくしゃする。
だけど、本来この三人は針としての仕事をするのが役目。
ここで人間として生きても、結果は生まれない、世界の法則に反するから。
だから、僕は厳しく言う。きっとお爺さんもそういうだろう。
「ハカ子、僕はいつでも君たちを見ているんだ。僕に時間を教えてくれないかな?」
「刻様……」
「それがハカ子の生きがいなんでしょ?」
「……そのとおりでございます!」
 元気良く言った。
そうして……ヒジ子と、ショウ子。そしてハカ子は僕の腕時計へと戻っていった。

 僕に時間を教えてくれる為だけに。


12

──────
───


「おはよーこっくん!」
「なんだ、静奈か」
「なんだとはなんだー、この」
「いやー、あはは」
「うん?なんか上機嫌だね、こっくん」
「まぁいろいろあってね」
「こっちは心配したってのに、こっくんが無断欠席したのって始めてじゃん?」
「そうだっけ?」
「てっきり不良少年になったのかと思ったよ」
「いつの時代だよ」
「あはは、でも元気そうでよかった」
「いつだって元気さ」
「うん?あれ?その時計って秒針ついてたっけ?」
「ああ、これ?うん、これはね

 僕が小さな冒険をした証だよ」


おわり。
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水菜

Author:水菜
SSばっか書いてる変態野郎。
主に禁書とか、姉妹オリジナルとか書いてる
VIP全鯖規制でオナニー出来る場所が無いので
ここでオナニーをする事にした
元まとめは黒歴史

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